文系出身がおくる物理せいかつ

中学の時に数学や理科が嫌いになり、高校大学と文系に進んだが、大学の時にあることがきっかけで物理に目覚めたとある文系の日記です。興味ある分野は物理のほか、数学、言語、景観工学、観光学、鉄道あたりですのでこの辺りが主なトピックスになりそうですな。

「数学フリーの物理化学」読書感想文

皆様こんにちは。これから気が向いたときに備忘録として読んだ本の感想をまとめておくことにします。自分向けなのであまり遠慮せずに言いたいことを言っていくスタイルにしようと思います。

 

今回レビューする書籍はこちら。

 

タイトル:数学フリーの物理化学

著者:齋藤勝裕

出版社:日刊工業新聞社

出版年:2016

ISBN:978-4-526-07600-8

 

【感想】

 正直私は物理化学が何なのかイマイチよくわかっていないです。物理なのか化学なのかはっきりしていただきたいものですが…。本書では化学者が化学寄りの立場から物理化学を解説しているようです。

 「数学フリーの」とタイトルにある通り数学らしい数学というのは出てきません。また、見開き1ページで一つの事を解説しており、左ページが本文、右ページは図表という構成です。図解雑学みたいな感じです。

 一通り読んで分かった気にはなった気がしますが、振り返ってよく考えると何だったんだという気もします。物理化学と言っているけど殆ど化学の話だった気がするのですが、そういうものなのでしょうか。物理化学初めの一歩としてサラッと読み流す分にはお気楽極楽でいい本だと思います。

 「はじめに」の部分に「本書を読むのに基礎知識は一切必要ありません」とありましたが、本当に基礎知識もない人は途中で躓く気がしますので、これは誇大広告な気がします。限られた紙面でまぁまぁな量を説明しているので仕方ないとは思いますが。逆に基礎知識がない人がスラスラ読み切って「物理化学完全に理解した」と言っていたらそれは思い上がり甚だしいだろうと思います。所々で話に飛躍があるので「ッッ!」となるところがありました。

 また、物理屋の視点から見ると大雑把だなぁという感じがします。別に物理をやっているわけでもないし、これはこれで良い気もしますが。

 ついでに、誤植がチラホラあります。しょうがないと言えばしょうがないけど初学者向けの本でこういうのはやっぱり気になります。

 全体的な感想としては「誰に向けて書いているのかよくわからない」と思いました。物理や化学を専門でやっている人には物足りなさすぎるし、素人には若干敷居が高い気がします。そういうことを考えると高校生向けなのかなぁ…とも思えますが。

 

 と、ここまでクドクド書きましたが、本書のコンセプトはとてもいいと思います。この本を読んでいて、少し化学って面白そうだなと思えました。

 「酸・塩基」のあたりがお気に入りです。8章-5節で『一般に金属元素は酸化されると塩基性酸化物を与え-(中略)-非金属元素も同様に酸性酸化物を与えます。』という説明があり、8章-6節-1で緩衝液の話題を出し、8-6-2で酸性食品塩基性食品の話をしています。ここで、「植物には金属イオンが含まれるので塩基性酸化物となり、肉類はアミノ酸を構成する窒素や硫黄を含んでいるため酸性酸化物を与える。だが、体液は緩衝液なので何を食べても体のpHは変わらない。」という説明をしていた。キッチリ伏線を回収している感があって読んでいて気持ちよかったです。

 ちなみに、どうでもいい話ですが、以前おばあちゃんの家に行ったときに私は何かのはずみで梅干を食べながら「梅干しは酸性やからなぁ~」みたいなことをポロッと言いました。するとおばあちゃんは、「梅干しはアルカリ性だよ」と言うんですね。んなバカな~こんなに酸っぱいのに?と思いながら「梅干し アルカリ性」で検索すると「梅干しはアルカリ性食品です」という記述が出てきました。その時はモヤモヤしつつも特に追求せず、「そうなんや、俺が間違ってたのか…」と謎の敗北感を味わっていました。しかし、本書によれば、塩基性食品というのは代謝後の生成物が塩基性のものを指すのだとのことで、梅干し本体は化学的には酸性なようです。スッキリしました。

 もう1か所のお気に入りはイオン化傾向の語呂合わせですね。「貸そうかな。まあアテにするな。ひどすぎる借金。」これ、高校化学ではそこそこ有名なようですが、私は高校化学を履修していないので「ふ~ん」と思いました。記憶力が弱いのでこういうゴロ合わせはとても助かります。まぁ、イオン化傾向なんて今後の人生で使うことはないと思いますが、レモン電池を作ることになった際にどの金属が極板に適しているか分からなくなった時にこのゴロを唱えると思い出すかもしれませんね。

 

 そういうわけで、化学に興味のある初心者なら面白く読めるかもしれません。この本を通して物理化学に出てくる用語に触れることができて楽しいと思います。化学嫌いの方はこの本よりもっと簡単な本を読むことをお勧めします。もっとちゃんと読みたい方は、本書で参考文献に上がっている「アトキンス物理化学(上)第6版」をご覧になると良いと思います。アトキンスはチラっとだけ見ましたが、こちらはこちらで絵がいっぱいあって分かりやすそうな雰囲気でした。字は小さいですがね。パッと見では物理色が強い感じでしたので、物理屋には馴染みやすいかもしれません。

 

それでは今回はこの辺で~。