文系出身がおくる物理せいかつ

中学の時に数学や理科が嫌いになり、高校大学と文系に進んだが、大学の時にあることがきっかけで物理に目覚めたとある文系の日記です。興味ある分野は物理のほか、数学、言語、景観工学、観光学、鉄道あたりですのでこの辺りが主なトピックスになりそうですな。

【ネタバレ有 辛口レビュー】名探偵コナン 緋色の弾丸を観た感想

 まず初めにお断りですが、タイトルにもある通り本レビューは辛口レビューですので、コナンファンの皆さんやこの映画が好きな方にとっては不快な内容が含まれている可能性があります。耐えられない方は読まないでください。

 

 一方で、映画を見てケチをつけることを趣味としている人間も一定数おりますので、どちらかというとそういう方はどうぞ読み進めてください。

 

 さて、まずは個人的評価を星で表しますと

★★☆☆☆(星1.5)

です。言葉で言うと、「最低ではない。」です。

 

 コナン映画は年々興行収入過去最高を更新しており、多様な観客がいることを考えると全ての人にウケるものに仕上げるのは難しいんでしょうね。個人的にはミステリーとかサスペンスに寄っていた初期コナンが好きだったのですが、探偵たちの鎮魂歌辺りから方向性が変わったような気がして、いつの間にかアクション映画というかギャグ映画に成り果てたという風に感じています。

 

 それが悪いとは思いませんし、実際それで売り上げが伸びているのだから商業的に成功しているのは褒めるべきことかもしれませんが、もはやこのストーリーを演じるキャラがコナンである必要性があるのか?と思います。

 

 そういうわけで、あまり期待せずに映画を見てみて思ったことなどを以下ツラツラ書きます。

 

 まずは良いところを述べておきます。

 

 序盤のパーティのパートはパーティ会場が停電して事件が起こるというコナンの定番パターンで、鈴木会長という割と視聴者にもなじみのある人物が忽然と姿を消したというのが不安をあおり、物語に入り込めたのは大変良かった。最近は序盤からつまんない映画が多かったので、若干作品への期待が高まってしまった。(結果的には何の伏線でもなくてストーリー上あっても無くても良かった事件ではあったが…。)

 

 また、元太がいつも「うな重うな重」と五月蠅くて鬱陶しかったが、今回はそれが事件解決に結びついたのも良ポイントであった。この元太の機能が最後の犯人の特定に結びついていれば収まりも良かった気がするが、まぁそんなことはなく、少年探偵団はこれ以降モブキャラになります。

 

 前説で赤井ファミリーの紹介をしていた。これが今回の最大の良ポイント。

 

 いいところはこれだけですね。以下、悪いところというか、ツッコミポイントを述べます。

 

 そもそもの発端である15年前の事件は結局何だったのかわからなかった。今回の事件がそれを模倣しているというのは分かったけど、誘拐したはいいけどすぐに解放したり、逃げ出した奴だけ射殺されたりしたのは何だったのか。そこが明らかにならないと今回の事件も謎のままではないか…。モヤモヤする…。

 

 犯人特定のためのカギが簡単すぎ。舞台挨拶で3人の名前がデカデカと表示されて名前についてウダウダ言ってたところで、名前がカギなんだというのは分かりました。後々証人保護プログラムで名前の変え方の話のくだりで「はいはい、アナグラムアナグラム」って感じでした。謎解きが得意な方なら舞台挨拶の時点でピンと来てるかもしれませんね。

 

 話が散らかりすぎ。コナン、新幹線組、赤井、ジョディ、秀吉、少年探偵と一々場面が切り替わるが大して意味はない。同時並行はせめて2場面くらいじゃないと情報過多。みんな別々の場所にいるのでみんなスマホいじってて、なんか視聴者置いてけぼり感があった。

 

 蘭がお父さんを守るとかコナンが欄を守るとか電話でツベコベ話してたシーンがは結局何か意味あったのでしょうかね。病院のシーンでは誰も誰を守ることもできずにバタバタ倒れたし、最終的にはリニア組と新幹線組で分かれちゃったし、小五郎と蘭はもう最終盤に至ってはカメラに映りもしなかったし。

 

 リニアが舞台になった意味が分からない。ストーリー上全く不要だった。いくら模倣犯とはいえデトロイトの都市鉄道とリニアを重ね合わせるなんて無理がありますわ。(てか模倣する意味あった?)クエンチもだいぶ推してたけど、スタッフの中にクエンチを聞きかじった人でもいたのだろうか。液体ヘリウムのクエンチ現象がどの程度の威力なのかわかんないですけど、あそこまではならないのでは…。だいたいヘリウムが部屋に充満したらツベコベ言う前に死にます…。

 

 リニア乗車前になんで体調検査したんだっけ?あれなんか意味あったの?

 

 なんで片道飛行機だったんだ?往復リニアでよくね?

 

 スケボーのシーンで路肩に駐車した車にぶつかりそうになったシーン、要らないよね。

 

 赤井の狙撃については言いたいことは山ほどありますが、もうこれはリアリティがどうのみたいな次元の話じゃないのでこれ以上ツッコみません…。

 

 携帯が鳴らなかったやつが犯人みたいなの、そもそもリニアに乗ってる奴が犯人に決まってんじゃん。意味なかったよね。それに、犯人だけケータイ鳴るとかだったら1万歩譲って納得したかもしれないけど、犯人だけ鳴らないとか特定ムズ過ぎだろ…。(それに、結局2人目の犯人に関しては携帯鳴ってるし。)

 

 なぜ井上は逃げたのか。これだけの大事件を犯すならおとなしく捕まるなり自殺するくらいの覚悟はあったと思うが…。

 

 パラシュート、あれ普通にリニアを運行できていたとしてもあんなもん走行中に出したら大惨事では…。

 

 リニアが最後に突っ込むシーンはベイカー街の亡霊を彷彿とさせるものでしたが何の捻りもなくてある意味衝撃でした。100万歩譲って世良とコナンが助かったとしても、犯人と被害者はもう無理やろ…。

 

 あとは、リニア作ったばっかりなのに勿体ないとか、液体ヘリウム勿体ないとかそういうこと思ってました。

 

 映画に限った話じゃないですが、近年のコナンは登場人物が喋りすぎで興ざめな感じもします。不必要なセリフや不必要なシーンが多いせいで話に集中できません。かつてのコナンは無駄なシーンや会話は全くなくて気持ちよく見れたんですけどね。それに、昔のコナンはとんでもないトリックだったりあり得ない動機であったとしてもそれを視聴者に気にさせない構成になっていました。最近はそういうのを隠す気もないというかなんというか、見ててこっちが恥ずかしくなるというか…。

 

 そこら辺の映画レビューを見てみると緋色の弾丸はそれなりに好評のようなのですが、観客のレベルが低すぎるんじゃないかなと思います。それか、映像で表現できていない部分を補完できる高レベルな一部ファンもいるのかもしれませんが…。いずれにしても制作陣がこういう作品を作ってしまうのは観客が甘やかしてきた結果だと思います。

 

 ここまでちゃんと読んできた方は分かると思いますが、私は本作やコナン自体のストーリーが悪いと言っているわけではなく、それを表現する技術が未熟だと言っているんですよね。同じストーリーでも表現の仕方によって印象が変わるというのは、最近放送された「ピアノソナタ『月光』殺人事件」のリメイク版を見た方なら納得できると思います。オリジナル版は当然ちゃんとお話になっていましたが、リメイク版はお話にすらなっていませんでした。コナン達が月影島に来た経緯の説明が不十分だし蘭が月光の譜面を見ただけでおかしいと気づくなど、不自然で雑な進行が散見されました。

 

 緋色の弾丸は、素材はそれほど悪くないと思うのでキチンと作ればもっといい作品になったと思うのですが、残念でなりません。長々となりましたが、コナンが末永く愛される作品であるように願う気持ちは私にもありますので、制作陣の皆さんは是非TVシリーズも映画も頑張って作ってください。私好みが世の中の好みと一致しないのは重々承知していますので、みんなが楽しめる作品であればそれでいいと思います。以上、緋色の弾丸辛口レビューでした。